その男、猛獣につき

★☆★


台風が過ぎ去った月曜日は、前日の暴風雨が嘘のように晴れ渡っている。


朝のミーティングの前にスタッフ全員で台風対策で移動していた機械や用具の片付けを行う。
もちろん、その中には有田の姿がある。



眼鏡をかけ、メイクもいつもよりも濃いように感じるが、それ以上に昨日泣きはらしたのだろう腫れぼったい目が気にかかる。



それでも、重たいテーブルも率先して、運んでいる。


「有田、変われ。そのテーブルはお前が運ぶのには無理がある。」
「いえ、大丈夫です」

そう言ってニコリと笑った有田の表情はすっきりとしているようだ。

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