その男、猛獣につき
★☆★
「おい、敦也。何であいつ居るんだよ?」
週末の車椅子バスケに遅れてきた俺は、体育館に入った瞬間、目を疑った。
「あぁ、舞花ちゃん?俺が誘ったの。実習の気分転換に、と思って」
そう言って敦也が指さす方向には、シュート練習に付き合う有田の姿がある。
「今週は誘わなかったのに…」
「誘わなかったんじゃなくて、誘えなかったんだろう?気まずくて。」
恨めしく敦也を睨むと、そんなのどこ吹く風といったような敦也は意地悪そうな顔してわざとらしく肩を竦める。
「舞花ちゃん、さっき実習充実しているって楽しそうに話してたぞ。よかったな」
「良かったような、そうじゃないような…」