その男、猛獣につき
思わずポロリと漏れ出た本音に敦也が小声で俺に喰いつく。
「何だ、それ?実習に集中して欲しいっていってたのは主税じゃねぇか」
「バイザーとしては、だな」
負けない程の小声で言ってみせると、敦也はガハハと笑う。
敦也の声に、練習のサポートをしていた有田が、俺の姿に気付いたようで、小さく会釈する。
俺も小さく右手をあげて反応すると、敦也はそれを面白がって見ている。
「主税、念のため言っておくけど、今日は舞花ちゃん誘ったの俺だからな」
宣戦布告ともとれる敦也のその一言に、焦りと同時にどこにもぶつけようのない、有田を渡したくないという独占欲にも似た、嫉妬にも似た感情が湧きあがってくる。