その男、猛獣につき

☆★☆


「さっきの人、どうだった?」

お婆ちゃんの治療の後、先生は入院フロアに治療に行くとのことで、スタスタと階段を昇って行く。
その先生を、私は少し小走りになりながら追いかけていた。



さっきの人とは、お婆ちゃんのこと。

一瞬、さっき見た先生の満足そうな笑顔が私の頭をかすめた。


「すごい、と思いました。」


私は素直な感想を、ちょっとだけ息を切らしながら伝えた。


「何が?」
少しスピードを緩めた先生は、私に冷ややかに尋ねた。



「興梠先生が、です。あの方だけじゃなくて、治療する人がみんなあんな短時間で変化するなんて。先生の手技がすごいと……」

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