その男、猛獣につき
「いえ、嬉しいです。そう言って頂けて…」

あぁ、私何言ってんだろう…。
これは、まだ先生のことが好きって言っているようなもの。

自分の発した言葉に、うろたえる。

「でも、そんなこと言われると私、……」

ププーーーッ




後方の車の急かす様なクラクションの音に、見つめ合っていた先生は、急に現実に惹き戻らせられたかのように車を急発進させる。


時間切れ。


私の言おうとしたことはクラクションによって遮られてしまった。



先生の様子を横目で見ながら、私もまた急に現実に戻ったかのようにさっきまで顔いっぱいに熱を帯びていたはずなのに、急速に醒めていく。

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