その男、猛獣につき
猛獣使い、噛まれる
先生と手を繋いだあの日。
私たちは手を繋いだまま、病院までの帰り道はどちらも喋らずに無言のままだった。
そのせいで余計に感じる先生の手の感触。
一点に意識が集中してしまうせいか、先生が少し指先を動かすだけでそこへの意識から逃れられない。
「じゃ、また明日」
「ありがとうございました」
病院の駐車場で先生の車から降りると、先生は簡単な挨拶をぶっきらぼうに伝えそそくさと車を発進させて帰っていった。