その男、猛獣につき
★☆★
「ありがとうございました」
「こちらこそ、たくさん勉強させてもらって、ありがとうございました。」
「森田さん、家でも無理のないように頑張ってくださいね。まぁ、来週の受診日には顔見せにリハビリ室にもお立ち寄りください」
金曜日、お昼休みが終わると、私と先生は正面玄関で森田さんを見送る。
森田さんの退院が、心から嬉しくて涙が止まらない。
「本当に、2人とも泣きすぎ」
森田さんと2人で涙で言葉を交わす横で、先生は呆れたように呟く。
「すみません。だって…」
それ以上の言葉を続けられず、先生を横目で見ると、この時ばかりは先生も本当に嬉しそうに笑っていて、その笑顔に胸が痛みを覚えるほどに締め付けられる。