その男、猛獣につき

「…って、聞いてるか?有田」

 

「えっ!!はい!!…送別会ですよね?」

 

先生の笑顔を思い出してぼぉっとしていたせいで、先生の話を聞いていなかったことを気づかれていたようで、先生は私を軽く睨む。

 

私がつい肩をすくめると、先生はいじわるそうに口角をあげて鼻で笑った。

 

「送別会なんてする必要ないよな?」

 

「はい、そんな学生の身分で…私の送別会なんて」

 

小さくなりながら先生の質問に答えると、目の前にいた敦也さんも、左隣にいた先生もブっと吹き出した。

 

「有田、そんな意味じゃねぇよ。鈍感なやつ…」

 

先生はそう言いながら私の頭をワシャワシャと撫でる。


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