その男、猛獣につき
猛獣の本心

「悪い。その辺に適当に座って」

 

敦也さんと明け方まで飲んでいた先生の部屋は、誕生日にシャワーを借りた時と比べるとリビングのテーブル付近に缶ビールの空き缶や皿が残っていて、先生はそれらを手際よく片づけている。

 

「何かお手伝いしましょうか?」

「ありがとう。…じゃあ、お言葉に甘えて。そのテーブル拭いてもらえる?」

 

動き回る先生に声をかけたら、意外な返事が笑顔とともに返ってくる。

 

一緒に片づけをしていると、二人きりの空間も居心地が良くて、ついつい会話も弾む。

 

好きな食べ物のこと、敦也さんとの出会いのことやよく見るテレビ番組のこと。

笑いのツボや食べ物の好みが一緒だとわかると嬉しくなってしまう。

 

 

今なら、先生に気持ち聞けるかもしれないなぁ。

 

先生が洗った皿の最後の一枚を布巾で拭きながら、考えるけれど、いざとなると、勇気が出ない。

 

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