その男、猛獣につき

「せ、先生・・・?今…」

 

私の言葉に出来ない問いに先生は、意地悪そうに口角をあげニヤリと微笑む。

 

「聞こえなかったのか?舞花、お前を子供だなんて思ってない。むしろ…」

 

先生はそこまで言うと、大きな右手で自分の顔を覆い隠す。

 

「き、き、聞こえてました。ただ、ただ。名前を呼ばれたのに…驚いたといいますか…ハイ。」

 

 

しどろもどろで答える私に、先生は視線を彷徨わせる。

 

 

「敦也とは名前で呼び合っているのが、妙に腹が立つ…」

隣に座っていた先生のぼそっと反論したが、子供の様で私はクスリと笑ってしまった。

 

< 263 / 328 >

この作品をシェア

pagetop