その男、猛獣につき
「せ、先生・・・?今…」
私の言葉に出来ない問いに先生は、意地悪そうに口角をあげニヤリと微笑む。
「聞こえなかったのか?舞花、お前を子供だなんて思ってない。むしろ…」
先生はそこまで言うと、大きな右手で自分の顔を覆い隠す。
「き、き、聞こえてました。ただ、ただ。名前を呼ばれたのに…驚いたといいますか…ハイ。」
しどろもどろで答える私に、先生は視線を彷徨わせる。
「敦也とは名前で呼び合っているのが、妙に腹が立つ…」
隣に座っていた先生のぼそっと反論したが、子供の様で私はクスリと笑ってしまった。