その男、猛獣につき
2日前の出来事が対峙している先生と無言の時間に鮮明に思い出される。
「必死で考えろって言ったはずだ。」
先生の冷たい視線を浴びながら、私はさらに縮こまる。
「この実習は、俺のご機嫌取りをするための実習じゃない。よく考えろ。」
「こっ、興梠先生だって‼」
森田さんのリハビリ、歩いたりしてばっかりじゃないですか。
咄嗟にその言葉を言おうとしたのに、言い返そうとしたのに、言葉を発する前に瞳に映る先生の姿はぼやけて、涙が流れ出てきた。
先生にボロクソに言われて、言い返せない自分が悔しい。
でも、先生が言ってることも分かる。
そして出来ない自分が情けない。
ちょっとでも先生に認めて欲しい。
なんだか色んな感情が混ざりあって、気づいたら私は嗚咽を漏らして泣いていた。