その男、猛獣につき
先生は、私の反応を少し面白がるように笑う。

「たとえ、実習の残りが少しだといっても、課長が既婚者で舞花に恋愛感情なんて一切ないっていっても、二人きりで指導を受けることを想像するだけで、かなり嫉妬する」



思わず見上げて先生の顔を見ると、視線がかち合う。

「まぁ、独占欲の強い男の性だな」

先生は照れくさそうにクスリと自嘲する。


「連絡だってさ、提出されたものをみれば、舞花が毎晩頑張って課題をこなしている事くらい想像がつく。俺だって、実習中はそうだったから。」



先生は私を見つめ合ったまま、少しだけ苦しそうに眉を寄せて私に語りかける。

「頑張っている舞花の邪魔、したくないんだよ。」

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