その男、猛獣につき
「本当は電話だって何度もかけようって思ったけど、バイザーに用もないのにかけるのも気が引けてしまって…」



先生の熱いキスからようやく解放された私は、肩で息をしながらぶつくさと呟いた。



「舞花、俺はバイザーの前に恋人だ」

先生から自然と出てきた言葉は、私が思っていたこととは全く逆の言葉。



そっか。

恋人の前にバイザーじゃなくて、バイザーの前に恋人って思ってもいいんだ。


ストンと納得できた言葉。

フッと気持ちが軽くなるのを感じるのは、私が単純なせいかもしれない。




先生は私の頭に手を置き、私を覗きこむ。

きっと耳まで真っ赤であろう私を覗きこんだ先生は、やっぱり実習中のように厳しい視線ではなく、とことん優しい表情を見せてくれる。


そんな先生の表情に、私は胸がきゅうんと締め付けられて息苦しささえ覚えてしまう。

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