その男、猛獣につき

熱を帯びた先生の瞳は、少しだけ揺れている。

そんな瞳に見つめられると、得意の蛇睨みでもないのに、私は動けなくなってしまう。



先生は見つめ合ったまま私を強く抱きしめる。

先生の胸の中で、呼吸を整えながら、先生の鼓動が速まっているのを感じる。



「先生の声、聞きたくなったら、電話してもいいですか?」

「もちろん」

頭の上から降り注ぐ声は、最高級に柔らかい。



「じゃあ、先生に会いたくなったら?」

「連絡しろ。出来るだけ早く会いに行く」
< 297 / 328 >

この作品をシェア

pagetop