その男、猛獣につき
「楽しかったって思えるのは、充実していた証拠だな。」
部長はそう言って乾杯の終わったビールを一気に喉に流し込むと、私に満足そうな顔して見せた。
空いたグラスに、瓶ビールでお酌すると、ありがとう、とお礼を言ってくれる部長は、私の耳元で囁く。
「有田ちゃんさえ良ければ、来年度うちの病院に就職してくれないか?」
私は驚きのあまり目を丸くして部長を見つめる。
「これは、リハスタッフ皆の総意。」
「あっ、ありがとうございます!!!」
嬉しくて胸がいっぱいになりながら、思わず笑顔を部長に向けると、ゴホゴホとわざとらしい咳払いが私の背中側から聞こえてきた。