その男、猛獣につき
 思わず振り向くと、部長と私の間にいそいそと主税さんが割り込んで座る。

 

「どうした、興梠?」

 

もちろん何も知らないであろう部長は不思議そうな顔をしている。

 

 

「ちょっと、部長と有田の距離が近すぎるのではないかと思いまして…」

ぶつぶつと言い訳を呟きながら、部長が不思議そうにしていることなんてどこ吹く風。

主税さんは手に持っていたビールジョッキを喉に流し込む。

 

 

「部長、興梠先生は有田ちゃんと部長にやきもち妬いたんですよ~」

 

竹内さんがすかさず部長に言うので、私はギョッとして竹内さんを見てしまう。

 

「もう知らないんですか、部長?2人の関係を」

 

「なっ、なに言ってるんですか!?嶋本さん!!!」

 

嶋本さんまで、その話に乗ってきてしまって私はさらに焦る。

 

それでも隣の主税さんは、会話には入らず、ビールジョッキを空にする。

 

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