その男、猛獣につき
「有田ちゃん、噂になってるんだからねぇ。週末は必ず興梠先生と有田ちゃんはデートしているって。この前は、夜一緒に居る所を見たってスタッフだっているし」
噂大好きなおばちゃん2人組は、目を輝かせて隣同士に座る私と主税さんを交互に見やる。
「それは、車椅子バスケに連れていってもらっていたりして…」
もう、何かいってくださいよ。主税さん。
しどろもどろになりながらいう私は、恨めしげに主税さんに目配せをする。
主税さんは私の困っている姿が可笑しいのか、右手で口を押さえながら、状況を見守っている様子だ。
「本当なのか?興梠…?」
部長は信じられないという様子で、主税さんに尋ねる。