その男、猛獣につき
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「いやぁ、今日は荒れてたわね。うちの猛獣くんは。」
リハビリ助手の竹内さんが、ビール片手に私に小声で囁いた。
私が悪いんですけど……。
小さくなりながら、肩をすくめて苦笑いした。
私が泣きじゃくったその日の夜は、リハビリ科のスタッフが私の歓迎会を近くの居酒屋で開いてくれた。
乾杯のあとは、リハビリ科の課長と興梠先生の間に挟まれ、軽く相槌をうちながらお酌していたものの、二人の熱い話が始まると
「いつもの事だから。気にしないで」
と、苦笑いした竹内さんに救出された。
永島病院のリハビリ科は、理学療法士の課長と興梠先生、それから作業療法士と言語聴覚士の先生が一人ずつ。
それから、リハビリ助手の竹内さんに嶋本さん。
どうやらもう一人理学療法士がいるみたいだけど、産休中らしい。
「レポートが宙に舞うって、久しぶりに見ました」
「あんなに冷たい顔して、中身は激熱ですから、うちの猛獣は。」
「実習生の男の子は泣かせてたけど、まさか女の子まで泣かせるなんて。ちょっと位優しくしてあげたらいいのにねぇ。」
みんな思い思いにアルコール片手に興梠先生について喋っている。