その男、猛獣につき

竹内さんの疑問に答えたのは冷淡で、それでいて色気のある声色。

一同が振り返ると、手に焼酎の入ったグラスを持った先生が立っていた。



「かっ、課長とお話は?」

びっくりした竹内さんが尋ねると、先生は課長の方を指さす。


課長の横には、いつの間にか言語聴覚士の先生がいて、苦笑いを浮かべながら相槌をうっていた。



「うちのかわいい実習生に、皆で俺の悪口言われたら堪らないですから」



かっ、かわいいって。


一瞬にして、頬や耳が熱を帯びたのが分かる。



そんなことには全く気がつかないようで、
先生は当たり前の様に私の横に腰を下ろした。


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