その男、猛獣につき
「興梠先生も、昔入った頃はかわいかったんだけどなぁ」
少しだけ酔いの廻った嶋本さんが興梠先生に絡む。
「今じゃ、こんなに手のつけられない猛獣になっちゃって…」
「猫かぶっていたんですよ。一番年下でしたし。まぁ、今もリハ科の中では一番年下ですけど。」
そう言って焼酎を一口口に含み、苦笑いした先生。
「そろそろ、興梠先生も結婚でもして落ち着かないとね。猛獣使いを探さないと~」
嶋本さんの冗談に、興梠先生に愛想笑いを浮かべた。
「相手がいませんから。」
興梠先生、独身なんだぁ。
それを知り、なんだか少しホッとした。
「いるじゃない。身近に。」
「いませんよ。俺の周りは、高齢女性と既婚女性ばかりです」
興梠先生、毒舌です…。
表情を崩さずに言い放った先生の一言に、竹内さんは表情がこわばったのがわかったが、嶋本さんはケラケラ笑った。
先生はいつもの淡々とした様子で、焼酎をまた一口飲んだ。