その男、猛獣につき
「そういえば、初日はコンタクトだったわよね。有田さん。何で眼鏡にしたの?」
不意に竹内さんが私に訊ねた。
「クマ隠し?誰かさんが大量の課題を与えるから~」
嶋本さんが笑いながら、質問をかぶせてくる。
「すいませーん。焼酎もう一杯。ロックで」
その質問が聞こえないのか、聞きたくないのか嶋本さんの発言とほぼ同時に先生は、店員さんに注文した。
「いえ、いつもはコンタクトなんです。コンタクトの洗浄液忘れちゃって。コンビニで買えるんですけど……。なかなか行く時間もないし、コンビニまで3Kmもあるから、夜道は危ないかなぁって。」
「そうね。この辺の夜道は、変質者よりイノシシとかの方が危ないかもね~」
イ、イノシシ!?
本物の猛獣じゃないですか‼
怖すぎる。
嶋本さんの言葉に私が真っ青になって固まったせいで、皆に笑われてしまった。