その男、猛獣につき


いつもの眼鏡はなく、栗色のふわりとしたパーマの髪型も、今日は固められていない。



ボーダーのTシャツに真っ白なリネンシャツ、黒いアンクルパンツを履き、足元はサンダルを履いている。


竹下さんが言っていたように、眼鏡を外した興梠先生は20代前半に見える。



このどしゃ降りで白いシャツが少しだけ濡れてしまったのようだ。両肩に少し雨の跡がある。



いつもと違う柔らかな印象に、初日にあった先生の姿を思い出す。



やっぱり、イケメン。



そう思って先生を見ると、バッチリ目があってしまい、瞬時に現実に引き戻される。

「あっ、おはようございます。」

気の抜けた私の挨拶に、先生は呆れた顔をする。



「なんだよ、その格好。」
先生に言われて、ハッとする。


そうだ。
私、部屋着だった。


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