その男、猛獣につき
「まぁ、その……、あれだ。そんな事しなくても済むように、有田は有田らしく、症例と向かい合ってみろ。手段なんて、考えなくてもいい。」
先生は開き直ったように口を開く。
先生の苦し紛れに言った、その言葉が私の胸に突き刺さる。
「私は、私らしく。」
先生の言葉を反芻してみる。
そっか、私らしく向き合えばいいんだ。
先生の機嫌とか、実習の合否とか考えず、明日から森田さんのことしっかりと考えればいいんだ。
そう思えた瞬間、私の気持ちはスッと楽になった。