その男、猛獣につき
有田は、というと、いつの間にかチームの選手たちから"舞花ちゃん" と呼ばれ、車椅子に乗ってパスの練習に混ざって、楽しんでいる。



そんな有田の方を小さく指さして、敦也がこそこそと俺に尋ねた。


「舞花ちゃんのこと、気になってんの?」

「なってねーよ。相手は実習生だ」

 

そうなんだよ、実習生なんだよ。俺の。

 

敦也に向けていった言葉を自分にも戒めのように言い聞かせた。

 

「へぇー。噂の《冷徹の興梠先生》も実習ラブしてるってことですか?」

冷やかすように言う敦也をジロリと睨む。



「だ、か、ら、なー。敦也!!この車椅子バスケも実習の一環。」

 

「じゃあ、その前の舞花ちゃんとのラーメンデートは?」

 

動揺してしまって何も言えなかった。
敦也は勝ち誇ったような顔をしていた。

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