その男、猛獣につき

「まさか、お前。泣かせたりしてないだろうな?」

しげちゃんが、黙り込んだ俺に尋ねる。

「ごめん、しげちゃん。もう泣かせた。」



「ええぇ‼興梠、お前なぁ。いい加減に……。」

「いや、しげちゃん。泣かせたことは反省してる。でも振り回されてるのは俺だから。」



俺の告白に、小言を言いたかったであろうしげちゃんに咄嗟に言い訳する。



俺の言い訳に、しげちゃんは電話越しに声をあげて笑う。


「まさか、《冷徹の興梠先生》が振り回されてるとはな。有田もただ者ではないな。」

来週、第3週目の木曜に巡回指導と伝えられ、電話を切る。




有田にしげちゃんの巡回指導の日程を伝えると、嬉しそうに笑っていた。


< 90 / 328 >

この作品をシェア

pagetop