その男、猛獣につき

リハビリ室の奥にあるADL室の襖を開けると、そこには有田がいた。

小さなちゃぶ台にパソコンを置き、有田とちゃぶ台を取り囲むように教科書や資料が広げられている。



その中心で、有田はちゃぶ台に突っ伏して、気持ち良さそうに規則的に寝息をたてていた。


先週と同じように、前髪だけをちょこんと結び、Tシャツにスウェット姿。



ちゃぶ台の上に眼鏡を置き、眼鏡の隣には飲み干した後の栄養ドリンク。


この1週間、こっちが心配する位頑張っていたんもんな……。


時計を見れば、14時半。



もう少しだけ、寝かせておいてあげたいから、少しだけ遅刻すると、後で敦也に連絡しておこう。



それに、もう少しだけ、有田の寝顔を見ていたい。




そんな想いが、沸々と沸き上がってくる。
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