その男、猛獣につき
柔らかな有田の髪の毛に触れると、くすぐったいのか、有田は顔だけをこちらに向ける。
一瞬の出来事に、俺は驚いたが、有田は規則的に寝息をたてている。
有田の無防備な寝顔は、あどけなく、そしてどこか少しだけ微笑んでいるように見える。
そんな有田を見ていたら、つい引き込まれるようにして俺は有田のその柔らかな唇にそっと口づけをした。
「主税、もうそれが答えだろ?」
どこか遠くから敦也の声で、そう言われた気がする。
そうだよ。これが答えだよ。
俺は心の中で、そう返事をした。