その男、猛獣につき
「ご、ごめんなさい‼」

「別にいいけど。実習中は休日寝溜めしないと……」


私の猛省に先生はいつもより態度が柔らかい。



それでも、バイザーを1時間以上も待たせていたなんて、頭が上がらない。




「ご、5分‼5分で準備します‼」

「あぁ、分かった。」


先生は私の勢いに押されたように苦笑いを浮かべながら返事をする。



先生が出ていったリハビリ室で私は大急ぎで準備を始める。




その時、やっと気づいた。

私の周囲にあった教科書類がきれいに片付けられていることをーー。



その一番上に置かれた治療手技をまとめた資料。

そこに大きめのポストイットが貼ってある。




先生の活字のように整った字が並んでいる。

ーーよくまとまってる。ムリだけはしないことーー


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