シークレットな関係
「でもいつも無表情で、自分のことは全然話さなくてとっつき難くて、課長を狙ってる女子社員が世間話をしかけても『ああ』とか『そう』とかの一言で済ませられて、会話が続かないの。だから食事に誘うこともできずに撃沈ばかり」
「会社の飲み会でもガードが堅くて誰も口説くことができなくて、一年経った今はあきらめた子が多いの」
「それなのに派遣で来たばかりの櫻井さんとはちゃんと会話をしてるし、一緒にタクシー乗って帰ってるでしょ?もうみんなびっくりで、何者なの!?って、昨日はちょっとした騒ぎになったのよ」
「で、みんなの代表で私たちが詳細を聞くことになったの。課長からは訊き出せそうにないから、あなたに」
「・・・そうだったんですか」
昨日は大きな音を出したのが注目を浴びた原因の一つだけど、そのあと高橋に引きずられるようにして出ていった私はそれ以上に目立っていたのだ。
でも普通に話していたとはいっても、仕事の説明を受けていただけで・・・それでも親しそうに見えたとは、彼はどれだけ無愛想にしてるんだろうか。
あ、もしかしたらボールペンのデコピンを見られていたのかも。
そのあと三人が改めて自己紹介してくれて、「給湯室にいてちょうどいいから」とお茶当番の仕方を教えてもらった。
みんなと話をしながらオフィスに戻ると高橋が出社していて、既に仕事を始めている。
始業時間はとっくに過ぎていて、私も焦りつつデスクに向かった。