シークレットな関係
やっと見つけたーと、安堵の声と深い息が漏れる。
いくら秘密だからとはいえ、なんて分かりにくいところを指定するんだろう。
定時に会社を出て余裕をもって待つ予定だったのに、約束の時間まであと五分に迫っているとはどんだけ迷っていたのか。
方向音痴の自覚はあるけど、地図アプリも役に立たないなんて計算外だ。
さんざん迷いつつもたどり着いた『カフェ ルーベル』は大通りから外れたところにあった。
隠れ家的なコンセプトなのだろうか、店自体が周りの植木に埋もれていて、窓はあれども店の中を見ることができない。
店内は暖色照明で観葉植物とアンティークな小物がたくさん置いてあり、私の好きなインテリアで嬉しくなる。
椅子も大きくゆったり座れて、身も心も落ち着く感じ。
けれども私の心は落ち着かず、ずっとそわそわしっぱなしだ。
七時まであと二分。
恋人契約を結んだのはいいけれど、具体的にはどういうことをするのだろうか。
昨夜は程よく酔っていたこともあってあまり深く考えなかったけれど、ラブシーンの練習相手っていうのは、つまり、やっぱり・・・。
高橋にされたキスを思い出してしまい、顔がどんどん熱くなっていく。
いやいや、ドラマではもっとすごいシーンをすることだってある。
これくらいで動揺してどうする。