シークレットな関係
ここの社員は、お昼になるとみんな外に出ていく。
お弁当を持ってくる人はいないみたいだ。
例の三人に誘われたランチを財政難で断った私は、デスクの上を片付け、パンを食べながら雑誌を読む。
今朝買ってきたのは、月間の女性誌だ。
表紙を捲ると、巻頭近くに『宇津木晴香』の特集ページがあり、インタビューやフォトが載せられていた。
笑顔はさわやか、真剣な表情は美しく、『好感度がある』と人気が出るわけがよく分かる。
インタビュー内容も性格の良さがよく表れていた。
雑誌を読めば読むほど敗北感が胸中を占めていく。
今日の一言占い『現実を見つめる日』はこれなのかな。
「羨ましいな・・・」
「何が、羨ましいんだ」
いつの間にか横に来ていた高橋が、トンと私のデスクに手をついた。
私また独り言を口にしていたのか。
「この子、後輩なの。本当に素敵な子で、いいなあって」
雑誌のページを示すと、高橋は興味なさそうにふーんと鼻を鳴らした。
「俺は、そんなヤツよりもっと魅力的な女を知ってる」
「それって、高橋の好きな人なの?」
「まあそんなとこ」
「そっか・・・」
そうなんだ。高橋には好きな人がいるんだ。
だから『俺を好きになるな』『好きになったら終了』という契約にしたんだ。
何故か胸の奥がちくんと痛む。