シークレットな関係
はあ~と安堵の息が漏れる。
ベッドサイドのランプを点けて時計を確認すると、まだ夜中の三時だった。
「久々に見ちゃったな・・・」
独りごちてベッドから下り、冷蔵庫からお茶を出してごくごくと飲む。
額も背中もびっしょりと汗をかいていて気持ち悪い。
いつまでこんな夢を見るんだろう。
昼間動物園で撮影を肌で感じたのが原因か。
それよりも洋子さんから聞かされた話の影響が大きいのか。
二十歳の時に出演した連続ドラマ『茜色のロマンス』。
あのときは初めてのラブシーンで緊張していたし、周りの空気にのまれていた。
焦れば焦るほど台詞がうまく言えなくて、感情も込められなくて、NGの無限ループに陥った。
悔しい。あのときの私に「負けるな!」と叱咤激励してやりたい。
それに、いつまでも過去にとらわれている自分がもどかしい。
『もう一度輝けると信じてる』
『ももちゃんを待ってるから』
高橋、それに洋子さんも。私には嬉しい言葉をかけて応援してくれる人がいる。
その人たちのためにも、前向きにがんばらなくては。
そうだ、もっと動かなくちゃ。
あまりにも仕事がもらえなくて自分から探す意欲も自信もなくしていたけれど、事務所にも顔を出してみよう。
それからはいろいろ考えて目が冴えてしまい、ベッドに入っても眠れずに朝を迎えた。