シークレットな関係
おじさんたちは、うちの子が小学生だったから六年前の・・・なんて言いながら空を仰いでいて、とうとう大野さんがタイトルを思い出してしまった。
「もしかして『茜色のロマンス』ですか!?」
「そうそう!それだ!それに出てた看護師役の子にそっくりだ!」
「ああー!!」
私の顔を見て、みんなが一斉にうなずいて「似てるー」と口々に言って納得している。
でも、どうやら本人だとは思ってないみたい。
「その人なら、昔よく言われました。女優さんに似てるって嬉しいですよね」
似てる人探しが納得できて満足したらしく、みんなの話題が変わってホッとする。
私の隣に座ったおじさんの娘の話を聞いていると時間はあっという間に経ち、夜の十一時近くになっていた。
さんざん飲み食いした私たちだけれど、おじさんたちは本当に奢ってくれて「じゃあね~」と手を振り酔っ払った赤い顔で家に帰っていった。
私たちも駅で別れ、一人で電車に乗り込む。
窓の外は、点々とともる家々の明かりが流れていく。
今の時間、みんなテレビを観ているんだろうか。
今日はびっくりした。まさか身バレしそうになるとは思っていなかったから。
ドラマを覚えていて、女優『桃瀬さくら』のことを覚えてくれていた人がいる。
そのことが、とてもうれしかった。
「頑張ろう」
小さな呟きは電車の音に掻き消える。
けれど、静かなやる気がふつふつとわいた夜だった。