シークレットな関係

夜十時過ぎ、高橋と一緒にマンション近くのコンビニへ向かう。

勉強のためにつけていたテレビドラマのCMを見て、「あ、プリンだ。食べたーい!」と口に出したらこうなった。


外は雨がしとしと降っていて、一本しか傘がないから相合傘だ。

こんなの子供のとき以来で、懐かしいような嬉しいような・・・。


「相合傘、小学校の時一度だけしたよね」

「そうだったか?」

「放課後に居残り勉強してた私を待っててくれたでしょ?」

「・・・覚えてねえけど。それ、待ってたわけじゃないと思うぜ」

「そうなの?」

「多分、ついでだろ」


ついで、なのか・・・。

あのころの私は子役の仕事で学校を休みがちで、勉強が遅れてて居残って帰ろうとしたら雨が降っていた。

持って来ていたはずの傘がなくなっていて、私は昇降口で途方に暮れていた。

どうして傘がないの?どうやって帰ろう?って、泣きそうだった。

そうしたら高橋が下駄箱の陰から出てきて、傘をさして言ったのだ。


『仕方ねーから入れてやる。帰るぞ』


すごくありがたくて、高橋がヒーローに見えた。

黄色い傘に二人で入って、何も話さないで歩いたっけ。

これは、覚えてないんだ。

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