シークレットな関係

二人で駅前の通りを歩いていると、前方に占い師が店を出してるのを見つけた。

テーブルを置いただけの簡素なお店で、そのベールをかぶった怪しげな風貌にはすごく見覚えがある。

また会うなんて・・・。


「あなた、ちょっとお待ちなさいな!」


そう、今から一年ほど前もこうして呼び止められたっけ。


「はい。私ですか?」

「そう!あなた。そこの男性も!」


彼の顔を見ると、うんざりしたような感じで「行くぞ」と言う。

そのまま素通りしようとしたら、占い師が追いかけるように言った。


「彼女、男難の相がなくなってるわ!その彼氏手放しちゃだめよ!」

「え・・・私のこと、覚えていたんですか」


驚いて問いかける私に、占い師はにっこりと笑った。


「勿論ですとも忘れようもありません」


話を聞くと、私はすごい不運な相をしていたらしい。

会社の倒産とか神社のおみくじとかいろいろ思い当って、自分なりに納得できる。

この占い師、結構当たる人なのかもしれない。


「それからあなたたちの関係、この先二年はシークレットでいた方が幸運ですよ」


彼と顔を見合わせる。

私の年齢もそこそこ高いから二人の関係は事務所にOKをもらっているけれど、世間一般にはまだまだシークレットの方がいいみたい?

占いはちっとも信じない彼だけれど、お願いしてみる。


「これからも、シークレットで恋してくれる?」

「仕方ねえな。付き合ってやるよ。明日からな」


そう言って差し出してきた手をぎゅっと握って歩く。

制作発表が紙面をにぎわすのは明日から。

それまではたっぷり公で──。


【完】


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