風流西宝(短篇)
散歩
これ、君、翼が服を突き破ってるよ。
私の前を歩いていた少年は、はっと振り向き、面倒くさそうに、そのふわっとした白い翼をどうにか折りたたむ。
あ、そこの君も。しっぽ、しっぽ。
少し横を見ると、バス停に立つ女の子のスカートから、猫のようなしっぽが。
私の小声に反応して、ビクッと毛が立ったように思えたが、瞬きすると、それはなくなっていた。
…おっと、私を襲わないでくれよ。
ちょっと鋭い牙を口から覗かせた、ひょろりと長身の男は、私と目が合うとニヤッと笑った。
そしてすれ違う瞬間、わっと襲う振りをしてひゃっと私を脅かすと、鼻歌混じりに通りすぎていった。
…あぁ、びっくりした。
それにしてもなんだ、やけに皆、人間に化ける「詰め」が甘いな…。
そうか!
今日は、「ちょっと楽しんじゃおう!の日」だったな!
決めた本人が忘れるとは…私も年かな…?
それから……えぇと。
そうだ、明日は台風を呼ぶために、「雨おどりの日」、だった。
楽しみ、楽しみ。
神様は今日も人間に化け、自分が決めた、ちょっとしたイベントを、楽しんでおりました。
あら、神様。
──ん、なんじゃ?
頭の上に、光るわっかが……。
おわり。