正しい恋愛処方箋(改訂版)
どうしたものかと書類を抱えたまま礼をして、そのまま固まる私。
そこにまた違う声が聞こえて更に私はピシリと固まっていた。
「ウサギちゃん、会長も顔上げてって言ってるし…ね?」
「……英部長…ムリです。」
「ウサギちゃんか、可愛いあだ名だね。」
会長にまでウサギと言うあだ名を知られ、私は恥ずかしいのかなんなのか。余計に頭を上げられずにいた。
英部長、私は今ほどあなたを呪いたい気分になった事はありません。
「ほら、ウサギちゃん?」
「……葵ちゃん、顔を上げなさい。先程のお礼もきちんとしなければいけないしね。」
英部長の言葉よりも、会長の言葉に首を傾げてしまう。
先程?私は会長には会った事なんかないはずなんだけど。
「さぁ、顔を上げて。」
会長の言葉に誘われ、ソロリと顔を上げれば次は恥ずかしいとか言ってられなかった。
「え?……おじいさん?」
目の前には先程の具合の悪そうだったおじいさん。と、英部長。
会長なんていないじゃないか、なんて考えていたら後ろから金切り声。
「貴方!会長になんて言葉!」
「君は下がっていろ。」
ぴしゃりと言葉を言い放つのはおじいさんで、ますます意味がわからない私はただただ首を傾げていただけだった。