正しい恋愛処方箋(改訂版)
「失礼します、経理の葵です。書類お届けに参りました。」
「あ、ありがとー!ウサギちゃん。」
「…………いえ、では。」
どこに行ってもウサギで呼ばれるのは慣れてはきても良い気はあまりしないのは現実。ましてや、
「また兄貴に弄られた?」
「…どうにかしてくださいます?英さん。」
目の前には英 光司、総務課の英部長の弟。ため息を吐いてもきっと罰は当たらないはず。
「あは、ムリムリ。兄貴ウサギちゃんを大層気に入ったみたいだしね。」
カラカラ笑う英さんは見た目は良い。英部長と兄弟なだけあるからか、美形。黙っていれば見惚れるかもしれないけど、この性格は本当に戴けない。
兄弟揃って人を弄るのが好きとか、ため息しかでない。
「期待なんかしてませんから。では、失礼します。」
愛想笑いを張り付けたまま一礼して去る私。それに英さんが苦笑を浮かべている、なんて知るはずもないのだけれど。
「今日はご機嫌ナナメだな、ウサギちゃん。」
なんて、そんな言葉も私は知らずにただ秘書課へと足を運ぶ。