正しい恋愛処方箋(改訂版)



会社に入って大急ぎで秘書課に向かえば、居たのは眉を寄せ私を鋭く見ている秘書課の室長。


「柏木さんから大分前に貴方が書類を持って出たと聞いたのだけれど……経理課から秘書課は30分もかかるのかしら。」

「…申し訳ありません。」

「社会人として自覚はないのかしら。少し英部長に気に入られているマスコットだからって。」


この人はいつもチクチクと嫌味を言う。って言うか、私だって好きで弄られてるわけじゃないのに。


「書類はもういいわ。柏木さんに持ってきてもらったから。」

「っ…申し訳ありませんでした」


頭を下げて苛々とした感情を押し込める。あまりにも悔しくて涙が競り上がるのも押し込めて、俯いたまま秘書課を出ようとした。


「失礼するよ。」

「……か、会長!」


私が出るより早く秘書課に入ってきた男の人に秘書課の室長は慌てたような声を出している。
会長?会長って社長より偉い人?

俯いたままの私にはその会長の顔は見えないけど。


「葵さん!貴方早くそこをおどきなさい!!」

「も、申し訳ありま…」

「良い。葵ちゃん、頭を上げなさい。」


室長に怒鳴られ一歩下がれば今度は会長の声。
顔を上げろと言われても、それは遠慮願いたい言葉だ。

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