桜色
-tendou



「なあ
これ湊にやってもらってるんだ…」














自分の髪を触りながらこちらに優しい表情を向ける彼
だがそのもう一方の手には
普通のものより長い立派な太刀が握られている















「湊すげえだろ」




笑顔を向けた彼に矛盾が見て取れた

「なんで帰した?」












「湊は戦闘向きじゃない」



冷たい言葉だった
彼の瞳が曇る


「その代わり
頭がすごくさえてる

もうこの抗争に手を貸してもらった
それ以上は望まないよ」















「バカだな…
やっぱり」







「なんとでもいいなよ」

















もう一度笑った彼は太刀を俺の前に放り投げた






「は、おまえ」
















「娘を抱くまで俺はそれを抜かない」









「ばかk……


口に出そうとした言葉を飲み込んだ
目の前の男のまっすぐな瞳を見たらどうでも良くなっていた




-manato








緩やかな時間が流れている室内
今日来るんだよな…














「black devil……




ガチャ











「来たか……













空の日本家屋
不気味に扉の開く音が響いた









投げた太刀を手に取り鞘から抜けないように固定し


















かまえた

















ガラッ



目の前の扉が開けはなたれた
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