桜色
-seichi



髪の短くなった父の隣に立つ
中谷さんと玲二の姿がない
それ以外は全員揃っていた
彼らの顔も
父の顔も


固かった














父は言葉を選ぶのが下手だ
いつも彼らを怖がらせてしまう
そして
自分の考えも話さないくせに思った通りに動かなかった彼らに厳しい顔をする



こんな時



あの人なら…
愛を1番に知るあの人だったなら
この人たちに父や僕も含めた漣家になんと声をかけたのだろうか




ちかくに大きな抗争がある
あの日彼らが命を落としたような
大きな戦争だ













一度血に染まった彼らが座っている床


愛を背負った血まみれの男が座っていたこの壇上


さらわれた男



彼女の誕生日










目を瞑り大きく息を吐いた











開いた時
鏡に映る黒い髪で黒スーツの男と目があった
そいつの表情は
ただ
苦しそうで
泣きそうで



触れれば脆く儚く散ってしまうかのようだった
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