桜色



気付いたらどこかもわからない場所にいた
ここどこだ…
でも
すぐに離れたほうがいいような雰囲気が漂っていた
まだ灯りのともらないネオン街
人通りも少ない

腕の中眠る彼女の体も冷えて来た
むやみに走る…
俺の


わるい癖






どしん
肩にぶつかった黒い人
上を睨みあげる
色素の薄い男の瞳が俺の胸の中の桜色を見る
「み…」
ぼそっと出てしまったような言葉
「知り合いですか」
「まあ…」
「病院!
知ってますか」
彼の細い腕を掴んだ
「ぁあ」
「教えてください」
頭を下げる
「ついて来て」

男はそういった














「ここ」
彼が立ち止まった
顔を上げる
ん、
ここ?
普通のマンション
看板などはない
「大丈夫多分腕はいい」
少し矛盾した彼の言葉
まあ、
いっか…


ピーンポーン

「畠山です…」

「……」
インターホンの向こうは静かだ
がちゃ
開かれた先
二十代後半と思しき男の顔
「ん…
かけるなんだよ…」
目の下の黒く塗ったようなくま
その瞳がゆっくりとこちらに向けられた
「はる…か……くん?」
名前を呼ばれびくりと肩を揺らす男
静かに視線をあげる


………
………
「診察お願いします。」
腕の中に収めていた桜色を彼の前に出す

「俺医者じゃないんだけど…
まあいいや
こっち」
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