恋色風船
明彦がそのセリフを口にしたのは、レストランではなく、ホテルの一室でだ。

店でメニューをながめたときよりは、熱のこもった切実な目をしている。


それになにか答えようと、口を開きかけて、明彦のくちびるでふさがれる。


麻衣の口からこぼれる、どんなひとことも聞き逃すまいとしていた時期は、もう過ぎたのだ。


それはしようのないことだけれど・・・・


明彦の指が、せわしなくワンピースのジッパーを下ろす。
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