恋色風船
途中でそれは、あらがうように引っかかり、明彦の指にいら立ったような力が加わる。


小さく舌打ちするのを、麻衣は聞き逃さなかった。

ビッ、とワンピースの繊細な生地が引きつったような悲鳴をあげて、ジッパーが動きだす。



麻衣がもらした吐息は、期待感ではなく、あきらめのそれだ。
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