恋色風船
恋のときめきとは、明らかに違う。

ただ、あのたやすく自分を酔わせる年上の男を、自分の若さと美しさにひれ伏させたいという欲が、むくむくとわいてくるのは事実だ。



「妻子持ちって、あたしは何気に経験ないからなぁ。
子供の話とかしたりするの?」


「たまーに、話の流れで、ぽろっと出たりするけど」

「子供って、ひとり?」

「だって」

「いくつ?」


「たしか、2歳の女の子。
林さん、携帯二つ持ってて、プライベート用の待ち受けを、子どもにしてんの。
『かわいい』とかあたしが口走って、それで」


なんだかんだパパやってんじゃん、といささか白けた気持ちが胸にさしたのは事実だ。
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