The Dark River
壱
欧州の島国に霧が訪れる。それとともに黒い貴族が動き出す…
それは、正義のような、悪事にも思えることだった。
小さな村にそびえ立つ大きな館。主はリヴァルドという王族の片割れだった。住んでいるのはアリスという王位継承権第2位の王女だった。両親は王都で姉とともに政治を行っている。妹のアイルが病弱のため一緒に田舎へ移り住んだのだった。
「アイル、今日の調子はどう?」
朝御飯を乗せたワゴンを運んできたアリスは本を読んでいるアイルに話しかける。
「絶好調よ、外に出られないのは残念だけれど。」
アイルは外に出たことがない。日光を浴びると貧血で倒れてしまうため、アリスが虫を捕まえて来るのを取り柄に館の中で暮らしていた。
「いつも通りよ。それじゃあ、街に出かけてくるわね。」
アリスは妹想いに見えて、実はアイルの事など大切にはしていなかった。アリスは田舎町から2キロほど離れた王都と経由している街に出かけてしまう。その街に1日の半分以上を費やす。
「あら、行ってらっしゃい……」
遊び足りない8歳のアイルは出しかけの本を本棚に戻した。
「今日は一緒に本を読む約束でしたっけ?でも、今から婚約者を見つけるために忙しくなるの。ゴメンね。」
アリスはそそくさと部屋を出ていく。身だしなみを整えた後、館を後にしていく。窓から覗く姉から遊んでもらえないアイルの姿を知る由もなく。馬車に乗り込み、やけに音が激しい馬車の床を睨む。
「この馬車古くなってきたわね。そろそろ変えてちょうだい。」
門番に告げ、大きな門を通り過ぎていった。
それは、正義のような、悪事にも思えることだった。
小さな村にそびえ立つ大きな館。主はリヴァルドという王族の片割れだった。住んでいるのはアリスという王位継承権第2位の王女だった。両親は王都で姉とともに政治を行っている。妹のアイルが病弱のため一緒に田舎へ移り住んだのだった。
「アイル、今日の調子はどう?」
朝御飯を乗せたワゴンを運んできたアリスは本を読んでいるアイルに話しかける。
「絶好調よ、外に出られないのは残念だけれど。」
アイルは外に出たことがない。日光を浴びると貧血で倒れてしまうため、アリスが虫を捕まえて来るのを取り柄に館の中で暮らしていた。
「いつも通りよ。それじゃあ、街に出かけてくるわね。」
アリスは妹想いに見えて、実はアイルの事など大切にはしていなかった。アリスは田舎町から2キロほど離れた王都と経由している街に出かけてしまう。その街に1日の半分以上を費やす。
「あら、行ってらっしゃい……」
遊び足りない8歳のアイルは出しかけの本を本棚に戻した。
「今日は一緒に本を読む約束でしたっけ?でも、今から婚約者を見つけるために忙しくなるの。ゴメンね。」
アリスはそそくさと部屋を出ていく。身だしなみを整えた後、館を後にしていく。窓から覗く姉から遊んでもらえないアイルの姿を知る由もなく。馬車に乗り込み、やけに音が激しい馬車の床を睨む。
「この馬車古くなってきたわね。そろそろ変えてちょうだい。」
門番に告げ、大きな門を通り過ぎていった。