手を伸ばせば、きっと。

「おかーさーん」

「はーいー?」

「これはどの段ボールにしまう?」

「んー、あ、そこにしまって!」

「はーい。じゃあこれはー?」

「その白い箱の中に!」



……

引っ越し作業を手伝ってくれる業者さんも来てくれて、なんと1日で終わることができた。

二人暮らしで物が少ないってこともあって。


「それでは、また機会があればご連絡ください。」


業者さんは帽子を取り、深々と頭を下げ、トラックに乗り込んでいった。

トラックが見えなくなるまで見送って。


「さてと…華純、ここが新しいお家よー!」

「何回見ても信じられない…大きすぎ…」


荷物を運び込むときに何度も何度も見たけれど、それでも未だに実感がわかないくらい、立派。

今まで本当にこの家に二人暮らしだったの…?


「あ、ねえそういえば、何で誰もいないの?」

「言うの忘れてたわ!お父さんは今の時期、とっても忙しいから仕事がどうしても休めなくてね。悠都くんも、サッカー部の練習が休めなくて。強豪校だから」

「へぇ…じゃあ…二人はあまり家にいないのかな」

「普段はそうみたい」

「寂しくないのかな…」

「小さいときからだから、慣れたんじゃない?」

「慣れるものなのかなぁ」


私達はゆっくり歩きながら、キッチン、お風呂、洗面所、トイレ、リビング、自分の部屋…一通り見て回った。





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