手を伸ばせば、きっと。
「ねえお母さん、お父さんて、不動産の仕事なんだよね」
「そうそう」
「……いい人見つけたねぇ!」
「でしょー?」
「…悠都くんて、何時頃に帰ってくるの?」
「いつもだいたい18時頃って言ってたわ」
腕時計を確認すると、16時45分。
あと2時間ないじゃんか…!
「春休みとか夏休みって、やっぱり朝から練習なの?」
「さぁ…それは本人に聞いてみたら?」
「なーんーでーー!」
「それ、話のネタになるでしょう!」
「で、でもー…!」
「頑張ってっ!」
お母さんは、今日からさっそくごはんを作るみたいで、買い物に行くみたい。
この家、すごく立地がよくて。
都会すぎるってわけではないけど、でも、いろんなお店がある。
「華純も一緒に行く?」
「ううん、待ってるよ」
「わかった。お留守番よろしくね」
「うん!」
早くこの家に慣れたいし。
「いってきます」
「いってらっしゃーい!」
ガチャ……
ドアが閉まって、完全に一人になった。