手を伸ばせば、きっと。
「なぁ、そういえば…母さんてどこ行ってんの?」
「…え?あ!!!!」
時計を見ると18時半だった。
「17時くらいには買い物に行ったのに…」
「けっこう時間経ってるな。迷ってんのかな」
「私、電話してみる!」
「プルルルル………お留守番サービスに接続します」
「出ない…」
「俺、捜してくるわ」
「私もっ!!」
「いいから、待ってろ」
「…うん」
悠都がスマホを手に玄関に向かったそのとき
ガチャッ
「ただいまー!遅くなっちゃったー!」
「おわっ」
悠都はドアを反射的に避けた。
「あら、悠都くん!おかえりなさい!」
「…た、ただいま…」
すごい、普通の親子みたい。
「ごめんねぇ、張り切って少し遠くのお店に行ったら帰り道迷っちゃって!」
「もー、おかーさん!!心配したんだよ!」
「…俺が聞くまで忘れてたくせに。」
「ち、ちがうよ!!」
「二人とも、もう話せるようになったのね!」
「最初の方、華純、歯切れ悪くて」
お母さんと悠都が笑っていて。
私も自然と笑顔になる。
この生活に慣れる日も、そんなに遠くはないみたい。