手を伸ばせば、きっと。

カレーも出来上がって、私が冷蔵庫からサラダを取り出していたとき、


「ただいまー」

「ちょうどいいところで帰宅ね」


私がキッチンからひょいと顔を出すと、お父さんと目が合った。


「おかえり……お父さん」


"お父さん"と呼ぶことに少し恥ずかしさを感じていたせいで、少し、躊躇ってしまって。


「ただいま。」

「ごはん、ちょうど出来たよ」

「おー、そうか!」


この家で、初めての食卓。

長方形のテーブルに、
私と悠都、お母さんとお父さんが並んで座って。


「ねぇ、お母さん、何で私ここなの?」

「いいじゃない、兄妹仲良く並んでね」

「華純、狭くないか?」

「大丈夫だけど…悠都は?」

「俺は全然よゆー」

「二人はもう仲良くなったのか!」

「私が買い物から戻ってきたときには、もうお互い呼び捨てだったの」

「父さん安心したよ…仲良くできるか…」

「俺らのこと心配しすぎ!高校生だぞ!」

「はは、そうだよな!」

「あ、ねえ!お母さん!」

「な、なに…?」

「悠都に私のアドレス教えた?」

「そうだった!忘れてたわ!」

「急にメールが来て、びっくりしたんだよ!」

「ごめんねー!」

「お母さん物忘れ多いよ!」

「俺の、登録しといて」

「した!」

「よしよし」


初めての食卓は、
とても楽しくて、とても温かかった。








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